
「AI研修に助成金は使えますか」。研修のご相談で、いちばん多い質問です。
答えは「条件を満たせば、対象になり得る」。厚生労働省の人材開発支援助成金という制度です。
ただし「生成AIの研修だから対象」という決まり方はしません。研修の内容、受講する人、実施方法、申請の時期で判定されます。
この記事では、制度の基本と、AI研修でつまずきやすいところを整理します。特に2026年5月に必須化された「疎明書(様式第28号)」は、AI研修の契約と相性の悪い論点を含んでいます。
内容は2026年8月14日時点の公開資料に基づきます。最終判断は管轄の労働局または社会保険労務士にご確認ください。新潟県内の企業なら新潟労働局が窓口です。
人材開発支援助成金とは

社員に職務に関連した研修を受けさせた企業に対して、研修費や研修中の賃金の一部を国が助成する制度です。窓口は各都道府県の労働局で、新潟県内の事業所なら新潟労働局になります。
「AI研修 補助金」と検索されることも多いのですが、公募で採択を競う補助金とは違い、要件を満たせば支給される仕組みです。
AI研修で候補になる3つのコース
コースは複数ありますが、一般的な企業の生成AI研修で検討するのは次の3つです。
| コース | 対象になる研修 |
|---|---|
| 人材育成支援コース | 職務に関連した知識・技能を身につける10時間以上のOFF-JT。 もっとも汎用的な入口です |
| 人への投資促進コース | 高度デジタル人材を育てる研修、定額制(サブスク型)の研修サービスなど。 高率ですが追加要件があります |
| 事業展開等リスキリング支援コース | 事業展開やDX・GX化に伴い、新しい分野で必要になる知識・技能を身につける研修 |
助成率は「コース × 企業規模」で決まる
「最大75%」という数字をよく見かけますが、どのコースの話かで変わります。中小企業の経費助成をまとめました。
| コース・メニュー | 経費助成率 | 限度額(1人1研修) 10〜100時間未満 |
|---|---|---|
| 人材育成支援コース(正規雇用) | 45% 賃金要件等を満たすと60% | 15万円 |
| 人材育成支援コース(有期契約労働者等) | 70% 賃金要件等を満たすと85% | 15万円 |
| 人への投資促進コース/高度デジタル人材訓練 | 75% | 30万円 |
| 人への投資促進コース/定額制訓練 | 60% 賃金要件等を満たすと75% | 1人1月あたり2万円 |
| 事業展開等リスキリング支援コース | 75% | 30万円 eラーニング・通信制は15万円 |
このほかに、研修中に支払った賃金への助成(1人1時間800円、コースや賃金要件等により1,000円)があります。ただし、eラーニングと通信制は賃金助成の対象外です。
いちばん率が高い高度デジタル人材訓練は、そのぶん条件が厳しいメニューです。
- 会社側:主な事業が情報通信業である、IPAのDX認定を受けている、などのいずれかに該当すること
- 研修側:ITSS・DSS-Pのレベル3または4の資格取得を目指す課程、Reスキル講座、マナビDXの掲載講座などに限られること
一般的な生成AI研修が、そのまま75%になるわけではありません。「最大75%」の表記を見たら、どのコースの話かを確認してください。
対象になるAI研修の条件

「AI研修だから対象」「10時間あるから対象」という単純な判定はできません。確認する軸は5つです。
1. 受講者の職務に直接関係する内容か
対象は「職務に関連した専門的な知識・技能を習得させる研修」です。同じ研修でも、受ける人の職務によって判定が変わります。
雇用契約書やカリキュラムで確認されるため、「誰に、どの職務のために受けさせるのか」を説明できる形にしておく必要があります。
2. 実訓練時間数が10時間以上か
通学制と同時双方向型では、1コースあたりの実訓練時間数が10時間以上必要です。計画届の届出時と支給申請時の、どちらの時点でも満たしている必要があります。
ここでいう実訓練時間数は、移動時間や助成対象にならないカリキュラムを除いたあとの時間です。半日の講演会や単発セミナーが対象にならないのは、多くの場合この要件が理由です。
3. 実施方法によって要件が変わる
オンラインの場合、「講師とその場で質疑応答ができる同時双方向型」か「動画を各自で視聴するeラーニング」かで扱いが大きく変わります。
| 項目 | 通学制・同時双方向型 | eラーニング・通信制 |
|---|---|---|
| 時間の要件 | 実訓練時間数10時間以上 | 標準学習時間10時間以上 または標準学習期間1か月以上 |
| 受講の要件 | 8割以上を受講 | 期間中に研修を修了 |
| 自社主催(事業内訓練) | 可 | 不可 |
| 賃金助成 | あり | なし |
4. 研修会社が「教育訓練機関」の要件を満たすか
外部に委託する場合、研修を提供する側にも要件があります。民間の教育訓練機関は、計画届の提出日までに定款や登記簿の事業目的に教育訓練事業が記載された、日本国内の法人であることなどが必要です。
eラーニング・通信制の場合は、研修会社が自社サイトにその講座の情報(概要・連絡先・申込みや資料請求ができること)を掲載していることも要件です。SNSやメールでの案内だけでは足りません。
支給申請では、研修会社の承諾が必要な「支給申請承諾書(様式第12号)」も提出します。研修会社を選ぶ段階で対応可否を確認しておくと、後戻りが減ります。
5. 対象にならない研修に当たっていないか
AI研修の企画で引っかかりやすいものを挙げます。カリキュラムの一部に含まれる場合、その時間は実訓練時間数から除いて計算します。
- 自社の業務で使う機器・端末の操作説明:通常の事業活動に当たるため対象外
- 職務に直接関係しない研修
- 接遇・マナー講習など職業人共通の内容:実訓練時間数の半分未満なら対象になります
- 意識改革研修・モラール向上研修
- 社員が自発的に受けるもの:業務命令でないため対象外
- 1社向けに作り込んだeラーニング・通信制の教材
事業展開等リスキリング支援コースでは、これに加えて「既存のアプリやシステムを買って操作方法を覚えるだけ」「コンサルタントによる指導」も対象外と明記されています。
2026年度の注目点|疎明書(様式第28号)

2026年度にAI研修と助成金を考えるうえで、いちばん影響が大きい変更です。
2026年5月14日付の改正で、支給申請時に「受講料等の価格設定に関する疎明書」(様式第28号)の提出が必要になりました。対象は前の章で挙げた3コースすべてです。
適用範囲は、計画届をいつ出したかに関係ありません。次のいずれかに当てはまるものが対象です。
- 2026年5月14日時点で、支給申請をしていないもの
- 支給申請済みだが、支給・不支給の決定がまだされていないもの
なお、経費助成を申請しない場合は提出不要です。
何を申告する書類か
1枚の書面で、会社が次の3点を申告します。
- 1. 受講料等は、研修会社から提示された金額をもとに、通常の取引慣行と社内手続に従って確認し、適正に決定した
- 2. 価格の決定時と支給申請時のどちらの時点でも、同じ内容の他の講座と比べて、助成金の有無による不合理な価格差があるとの認識はなかった
- 3. 疎明書の提出時点でも、他の講座と比べて合理性を欠く価格差があるとの認識はない
様式第28号(R8.5)の記載事項を要約しています。原文は厚生労働省の様式(PDF)をご確認ください。
支払った金額を証明する書類ではありません。その価格が市場から見て説明できるものかを、会社が自分の名前で申告する書類です。
なぜ必要になったのか
受講料が他の講座と比べて著しく高い場合、その差額は助成の対象になりません。公式資料には2つの例が挙げられています。
- 助成金を申請する会社には30万円、申請しない会社には10万円という価格設定 → 差額20万円は対象外
- 通常30万円で、助成金が不支給になったら20万円を返金する契約 → 差額20万円は対象外
支給申請では「教育訓練機関等から説明を受けた資料一式の写し」も提出します。営業段階で受け取った提案書や見積書も、後から見返される前提で保管してください。
AI研修で問題になりやすい4つの契約
価格の説明責任が会社側に置かれたことで、AI研修に多い契約の組み方がそのまま論点になります。
(1) AI研修とAIツール導入のセット提案
公式パンフレットに、この事例がそのまま載っています。「AI研修とAIツールの導入をセットにすれば、ツール導入費用も研修費用として申請できる」という営業に対して、AI研修費用は対象だが、AIツール導入費用は対象外と明記されています。
研修とツールを1つの見積書にまとめると、対象外の費用が混ざった価格として扱われます。契約段階で費目を分けておくのが安全です。
(2) 定額制のオンライン学習サービス
サブスク型の研修サービスは「定額制訓練」として対象になり得ますが、講座の中身が見られます。
- 全講座数の5割以上が趣味教養など対象外の講座なら、そのサービス自体が対象外
- 職務に関係する講座と分けて契約できるなら、その分だけが対象
- 10時間の計算に入れられるのは、職務に関係する講座の時間だけ
- 業務命令として労働時間内に受けることが前提
(3) 複数拠点で使う法人契約
複数の事業所がある会社が法人単位で契約する場合、利用者がいちばん多い事業所を管轄する労働局に、他の事業所分をまとめて申請します。
重要なのは、1つの契約に対する助成は一度限りという点です。他の事業所で同じ契約の申請・受給をしていると、不正受給になる可能性があると明記されています。拠点ごとに担当者が分かれている会社ほど、事故が起きやすいところです。
(4) 途中で受講者を増やしたときの差額
定額制訓練の対象者は、計画届に受講予定者として届け出た人に限られます。届け出ていない社員も受講はできますが、対象者には含められません。
さらに、届け出ていない人が受講したことで契約額が増えた場合、その増加分は対象外です。人数で価格が変わるサービスでは、差額が丸ごと自己負担になります。
受講者を追加するときは、変更届の提出期限に注意してください。通常の研修は研修開始日の前日まで、定額制サービスは変更契約の適用日の前日までです(定額制では人数を減らす場合も同じ扱い)。期限までに出さずに変更後の研修を実施した部分は、助成の対象になりません。
研修内容が制度要件に合いそうか、設計の観点から整理します
予定している研修が、職務との関連や時間の要件と噛み合いそうかを一緒に整理します。助成金の支給可否については管轄労働局等の確認が必要です。
申請の流れと期限

つまずきやすいのは、研修の中身より手続きの順番です。研修を実施してから申請することはできません。
研修を決める前に済ませること
計画届を出す日までに、社内で2つの準備が必要です。初めて申請する会社で漏れやすい項目です。
- 職業能力開発推進者の選任:研修や人事の担当課長などを選んでおく
- 事業内職業能力開発計画の策定と周知:作ったうえで、社員に知らせておく
手続きと期限
| ステップ | 期限・タイミング |
|---|---|
| 1. 推進者の選任/社内計画の策定・周知 | 計画届を出す日まで |
| 2. 職業訓練実施計画届を提出 | 研修開始日の6か月前〜1か月前 定額制訓練は契約開始日が基準 |
| 3. 計画どおりに研修を実施 | 変更する場合は期限までに変更届 出さずに変更した部分は対象外 |
| 4. 研修費用の全額を支払う | 支給申請までに完了 |
| 5. 支給申請(疎明書もあわせて提出) | 研修終了日の翌日から2か月以内 |
| 6. 労働局の審査を経て支給 | 他の助成金より時間がかかる場合があります |
助成金は後払いです。研修費用は一度全額を支払う必要があるため、資金繰りの面でも先に確認しておく項目になります。
なお、この制度は国の制度なので、地域を問わず利用できます。手続きは事業所を管轄する労働局に対して行い、新潟県内の事業所であれば新潟労働局が窓口です。
対象外・不支給になり得るケース
「実質無料」を謳う提案には乗らない
厚生労働省は、助成金で研修を実質無料にできると謳う勧誘について、名指しで注意喚起しています。この制度は、会社が研修費用を全額負担したうえで、その一部を助成するものです。
返金などで実際には全額を負担していない場合、要件を満たしません。次のようなケースが対象外とされています。
- 研修会社からの入金と助成金の合計が、研修費用と同額になる
- 受講インタビューなど、広告宣伝の対価として金銭を受け取る
- 営業協力費・協賛金など、名目を問わず金銭を受け取る
- 研修後のアンケートの対価として協力金を受け取る
悪質な場合は、会社名・代表者名の公表や刑事告訴に至ることも明記されています。
申請代行は社会保険労務士の独占業務
社会保険労務士法第27条により、社労士以外の者が報酬を得て助成金の申請手続き(申請書の作成、提出代行、審査対応など)を行うことは禁止されています。
研修会社が「無償で申請手続きを行う」と謳っていても、受講料に手続きの対価が含まれると評価される場合は同法の問題が生じる、と説明されています。
申請を外部に頼むなら、社会保険労務士に依頼するのが正しい形です。行政書士は雇用関係助成金の申請代行者にはなりません。
会社側の要件で対象外になるもの
- 不正受給から5年以内に申請した、または決定日までに不正受給をした
- 前年度より前の労働保険料を納めていない
- 申請日の前日から過去1年間に労働関係法令の違反があった
- 審査に必要な書類を5年間保存していない、実地調査に協力しない
- 雇用保険適用事業所でない
助成率だけで研修を選ばない

ここまで制度の話をしてきましたが、研修を選ぶ判断軸としては、助成率は最後に来るものだと考えています。
助成金は、実施すると決めた研修の費用負担を軽くする制度であって、研修を実施する理由にはならないからです。
私は普段、エンジニアとして開発の現場にいます。受講後に効果が残るかどうかは、次の点で決まっているように思います。
- 目的が業務の言葉で決まっているか:「AIリテラシーを上げる」ではなく、どの業務のどの工程を変えたいのか
- 自社の業務を題材にできるか:一般的な例題だけの演習は、現場で再現されにくい
- 研修後に手元に残るものがあるか:試作物や整理した資料が残ると、次の一歩を社内で議論できる
- セキュリティと検証まで扱うか:AIの出力を業務に使ってよいかを、受講者自身が判断できる状態にする
- 研修後に相談できる相手がいるか
ツールの操作説明で終わる研修が制度上も対象外になりやすいことは、前の章で見たとおりです。要件定義や検証まで扱う理由は実務で使えるようにするためで、結果として制度の考え方とも噛み合います。
参考:当社が実施したAI研修のアンケート

運営会社である株式会社クラウドネイチャーが実施したAI研修では、受講後アンケートの総合満足度が第1回(回答20名)で平均4.00/5、第2回(回答24名)で平均3.67/5でした。実施回ごとの結果で、合算した数値ではありません。
第2回で「特に役立ったテーマ」を尋ねた設問(回答23名・複数選択のため合計は100%を超えます)では、17名(73.9%)が「エージェント(Codex)の活用」を選びました。ツールの紹介より、実務でAIをどう動かすかに関心が集まる傾向が見えます。
新潟AIアカデミーの研修と助成金

新潟AIアカデミーは、株式会社クラウドネイチャーが運営する法人向けの生成AI研修・開発内製化プログラムです。新潟を拠点に、システム開発とAI活用支援を行う会社が講師を務めています。
提供しているのは「AIの使い方」の説明ではありません。業務ツール開発の6ステップとして、LLMの原理から要件定義、実装、セキュリティと検証、発表までを扱います。
助成金との関係を、事実として書きます
- MINIMUM(AI研修・全1回):全1回のため、実訓練時間数10時間以上の要件を満たしません。現在の構成では対象になりません
- PREMIUM(開発内製化プログラム・全5回+Demo Day):移動時間などを除いた実訓練時間数で標準10〜20時間です。時間の要件は満たしますが、対象になるかは受講者の職務との関連や実施方法などを合わせて判定されます
当社の研修が助成対象になることは保証できません。支給可否を判断するのは労働局です。自社業務を題材にする演習は前の章の線引きにも関わるため、演習の設計と申請内容の整合は事前に確認しておく必要があります。
当社が対応すること/しないこと
対応すること
- 助成金要件を意識した研修カリキュラムの作成
- 見積書、時間割、講師経歴などの研修資料の提供
- 申請に必要な研修情報の提供
対応しないこと
- 助成金の支給保証
- 受講企業名義での申請
- 労働局による対象可否の判断
- 不支給時の研修費返金
- 助成金申請代行
申請手続きそのものは、社会保険労務士に依頼するか、貴社で行っていただく形になります。
研修プランと費用は料金プランのセクションに、これまでの実施記録はセミナー・導入実績一覧にまとめています。
よくある質問
Q. ChatGPTの使い方研修でも対象になりますか?
内容によります。対象になるのは、受講者の職務に直接関係する知識・技能を身につける研修です。厚生労働省のパンフレットでは、自社の業務で使う機器・端末の操作説明は助成対象外とされています。事業展開等リスキリング支援コースでも、既存のアプリやシステムを買って操作方法を覚えるだけの研修は対象外と明記されています。操作手順だけで終わる構成か、職務に必要な知識として設計されているかが分かれ目です。
Q. オンライン研修でも対象ですか?
対象になり得ますが、やり方で要件が変わります。講師とその場で質疑応答ができる同時双方向型は、通学制と同じ扱いです(実訓練時間数10時間以上、8割以上の受講、賃金助成あり)。動画を各自で視聴するeラーニングは、標準学習時間10時間以上または標準学習期間1か月以上が要件で、研修を修了することが必要になり、賃金助成はありません。
Q. 経営者本人も対象になりますか?
原則として対象になりません。この助成金の対象者は、申請する事業所の雇用保険被保険者であることが要件で、事業主本人や代表取締役など雇用保険被保険者でない方は含まれないためです。ただし、部長・支店長などの従業員としての身分をあわせ持ち、服務態様や賃金からみて労働者的性格が強いと認められる兼務役員は、雇用保険の被保険者になり得ます。この場合は加入状況によって判断が変わるため、ハローワークにご確認ください。
Q. 研修を始めてから申請できますか?
できません。職業訓練実施計画届を、研修開始日の6か月前から1か月前までに労働局へ提出する必要があります(定額制訓練は契約開始日が基準)。研修の日程を先に決めてから制度を調べ始めると、この1か月前の締切に間に合わないことがあります。
この記事について
- 執筆・監修
- 渡邉 浩平(新潟AIアカデミー 講師 / 株式会社クラウドネイチャー 代表)。エンジニア歴 約10年、自社AIプロダクトの企画・開発・運営、企業向けAI研修・セミナー登壇。Google Cloud Certified Generative AI Leader。
- 最終更新
- 2026年8月14日
- 免責
- 本記事は制度の概要を整理したもので、個別の支給可否を判断するものではありません。制度の内容・要件は改正される場合があります。実際の申請にあたっては、必ず管轄の都道府県労働局または社会保険労務士へご確認ください。当社は助成金の申請代行を行いません。
